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10月

早稲田ウィークリー(2020/10/26)

小説家・重松清教授が選ぶ 2020年、早大生にオススメの5冊と楽しみ方

10月27日は「読書の日」です。2020年は自粛生活やオンライン授業で、読書の時間が増えた早大生も多いのでは? 今回は、小説家で文学学術院教授でもある重松清先生にインタビュー。『ナイフ』や『エイジ』、『きみの友だち』など、現役学生世代にも人気の作品や、『流星ワゴン』や『とんび』など、映像化された作品も多く、今夏には長編小説『ステップ』が山田孝之さん主演で映画化されました。多数のベストセラーを生み出してきた重松先生に、今、早大生へお勧めしたい本や楽しみ方について伺いました。

— 早大生へお勧めしたい本の一冊として『〈弱いロボット〉の思考』を取り上げていただきました。以下は抜粋です。

【3】『〈弱いロボット〉の思考』岡田美智男

『〈弱いロボット〉の思考』(岡田美智男/講談社現代新書) 人とロボットの持ちつ持たれつの関係とは? 〈弱いロボット〉の研究で知られる著者が、自己、他者、関係について、行きつ戻りつしながら思索した軌跡

今、世界的な流れとして「強さ」を求める傾向にあります。強いリーダーを求めるとか、強い国家でありたいとか…。「AI(人工知能)は間違わない」「ロボットは万能である」といった考えもこの強さに含まれている、と捉えることもできます。そんな流れと反するように、この本の著者である岡田美智男先生(豊橋技術科学大学工学部情報・知能工学系教授)は、「不完全で弱いロボット」の研究に長年取り組んでいます。

「『弱さ』とどう向き合っていくか」という考え方は、これからの時代にとても大事なテーマになるはず。例えば、超高齢化社会において、フィジカルがどんどん衰えていく世代とどう付き合っていくか。障がいを持つ人たちとどのように共生するか。日本語を母語としない外国人とどう一緒に暮らしていくか、という問題もそうです。

「弱いロボット」という発想は、手塚治虫さんや石ノ森章太郎さんの漫画でも何度も描かれてきました。「ドラえもん」だって不完全で弱いロボットと言えますが、だからこそ愛される存在でもある。その考え方を、人間社会の中にしっかりと昇華していかなければいけない。

この本は、文系・理系、それぞれで捉え方が変わるかもしれませんね。文系的なアプローチならこう読む、理工系の人間ならこう読むといった具合に、この一冊をどう読み解くかが学部間の個性の表れになりそうです。

 

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