日本記者クラブ(2018/12/5)
05
12月

日本記者クラブ(2018/12/5)

日本記者クラブにて、〈弱いロボット〉についての講演(記者会見)をする機会をいただきました。

以下は、司会をしていただいた上田俊英氏、日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社編集委員)によるレポートです。

互いの強さ引き出す設計

上田俊英 (企画委員 朝日新聞社編集委員)

 ゴミ箱の形をしているのに、自分ではゴミを拾えない。よたよたと人に近づき、そばでもじもじ。人に、拾ったゴミを中に入れてもらうと、体を少し傾けて「お辞儀」する。

人の支えを借りながら、おもしろい行動をする。そんな「弱いロボット」の研究を20年以上続ける。

「手伝ってあげた方も、まんざら悪い気はしないでしょう」

しかし、そのかわいらしい姿に隠された研究の目的は深く、哲学的でさえある。会見では、まず「私たちはわざと『弱いロボット』をつくっているのではない」と強調した。

人は決して一人で生きられず、他者とのコミュニケーションの中で生きている。その片方をロボットに置き換えてみることで、人と人とがどのような関わりをもっているのかを考え、ソーシャルなロボットの設計に応用するのが狙いだ。

「私たちは、一人でできることをよしとする文化の中で育ってきた」

ロボットも同じ。私たちはロボットに「一人でできる」ことを期待する。そしてロボットの機能が高まっていくと、完璧に仕事をこなす便利なものとして、いろいろな仕事を担わせるようになった。

しかし、その過程で人とロボットとの距離はどんどん遠ざかり、人はロボットのミスに不寛容になっていく。「機能が高まるほど、人の傲慢さを引き出すのかな。世の中のいろいろなところで、同じような状況が生まれつつある」と指摘した。

一般的なロボットが「一人でできる」ことを目指す以上、いかにして能力や機能の隙間を埋めるのかが、研究開発の中心課題となる。これに対して「弱いロボット」は「互いの弱いところを補いながら、強いところを引き出す」ことが目的だ。

AI(人工知能)の進化で、人の仕事が奪われるのではないかという懸念が高まる時代。「人とロボットとの共生を議論する、ひとつの手がかりにしたい」と語った。

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