EIシリーズ「レジリエンス」刊行記念イベント<講演録>
(イベントの内容をハーバード・ビジネス・レビューにて、紹介していただきました。以下、抜粋)
レジリエンスは、他者と関わるなかで育まれる
豊橋技術科学大学の岡田美智男教授は、レジリエンスについてこのように語る。
「レジリエンスとは、不運が重なり、心が折れそうになっても、なんとか踏みとどまれる力です。ただ、レジリエンスを個人に帰属する能力や資質とみなされることが多いのですが、むしろ、他者や周囲の環境との関係性のなかに宿る性質だと理解することが大切ではないでしょうか」
つまり、レジリエンスを個々人が高めることも大事だが、それ以上に、他者と関わるなかで相互に育み、その結果としてレジリエンスの強い組織や社会を作ることによりつながるという。
レジリエンスという言葉のイメージをロボットで例えると、高度な知能を持ち、攻撃されて倒れても立ち上がる強靭なターミネーターのようなロボットを想像するかもしれない。しかし、それは想像の世界の話であって、実際のロボット開発においては、むしろ<弱いロボット>の方が、レジリエンスが高い場合が多いと、岡田教授は説明する。
<弱いロボット>とは、知能や機構はさほど複雑ではなく、単体では単純な動作しかできないが、周囲の環境や他者をうまく利用することで、目的とするタスクや複雑な作業をこなす。岡田教授は、いくつかのスライドを示しながら具体例を挙げた。
たとえば、山道など不整地での歩行は、ホンダのアシモのような高度な歩行技術を持つ人型ロボットでも難しい。しかし、生物的にはより原始的な、ゴキブリの動きを模した小型の6足ロボットは、それを簡単にやってのける。動きも単純で、岩にぶつかったら、足をもう少し高く上げる。そこで転倒しそうになったら、6本あるうちの上がっている足をすかさず下ろしてバランスを取るというものだ。
「生物のしなやかな動きから学べることは、さまざまな環境変化に適応するには、あらゆる変化に備えられるようあらかじめ作り込んでおくのではなく、むしろ作り込みは最小限にして、環境の変化に委ねてしまうほうがいいということでした」