朝日新聞の「天声人語」(2018/9/25)にて、〈弱いロボット〉の話題を紹介していただきました。大変に光栄なことだと思います!
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どぎまぎして街頭でティッシュがうまく配れない。浦島太郎を語りながら肝心の「竜宮城」の名をど忘れする。そんな頼りないロボットが、愛知県の豊橋技術科学大学で次々に開発されている。△「不器用な分、見る人がごく自然に救いの手を差し伸べたくなります」と岡田美智男教授(58)は言う。あえて弱点や限界をさらすことで、接する人の助力を引き出す。発想の斬新さに驚く。△世に出したのは約30種類。たとえば昔話ロボットは、たどたどしい話しぶりに、子どもたちが助け舟を出す。「竜宮城!」「玉手箱だよ」。着想は学生時代、音声を発する自販機から得た。△「お買い上げありがとうございました」。お礼の気持ちが伝わってこない。人工音だからか。いや違う。人と機械が交感できると言う思想が欠けているからではないのか。△以来34年、人の情動に訴えかける「弱いロボット」を作り出してきた。プロ棋士を打ち負かしたり、無人で車を走らせたり。近年、人工知能(AI)の能力の高さがしきりに語られる。△「多くの職がAIに奪われる」と大量失業を予言する声も聞く。 △報道の世界でも、市況や試合結果を手早く記事化するソフトがすでに実用化されており、こちらもうかうかしてはいられない。△だがロボットは常にその競争相手でしかないのか。弱いロボットの1つ「む~」などはなかなかの聞き上手。こちらの話にうなずき、目を合わせ、合いの手を入れてくれる。人と機械も持ちつ持たれつでありたい。