AERA dot. (2012/11/30)に〈弱いロボット〉について紹介していただきました。
(オリジナルは、ここです)
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周りをウロウロ 「弱さ」で人にゴミ拾いさせるロボット
そもそも、「弱さの自己開示」ができる社会のほうが、誰にとっても優しい。
その実例として、ネットワーク論を専門とする、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)研究所所長の金子郁容教授(64)は、SFCの卒業生が取締役を務めている「ミュージックセキュリティーズ」の取り組みを紹介してくれた。
同社が始めた「被災地応援ファンド」は、1口1万500円で多数の応援者から資金を調達する仕組み。被災した事業者の多くがマイナスからのスタートで融資が受けられないなか、2万人を超す人から8億円以上が集まり、宮城県の沿岸部を中心とした小規模水産業など、19の地元企業が事業を再開できた。
気仙沼市のある海鮮問屋は、「ここから復活するしかないし、この仕事以外にない」と困り果てた様子をさらけ出したことが呼び水となり、400人以上が支援したという。
「人って、頼られることは、本来うれしいことなんです。弱いんです、これが足りないんです、と旗印を立てることは、誰かが何らかの介入をしてくる余地を与えるということ。『他力と自力のダンス』の始まりです。他力を呼び込むことで、思わぬ楽しい展開が生まれることもある。それが、自己をひらいた結果もたらされる豊かな関係性であり、そこに、弱さが生む希望、弱さの強さがあるのだと思います」(金子教授)
「弱さのチカラ」を私たちに見せてくれるロボットたちがいる。最近、『弱いロボット』(医学書院)を出版した豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)の岡田美智男教授(52)を訪ねた。
ロボットたちは、ヨタヨタ危なっかしく進むもの、相手の目線を常に気にしながらトツトツと話すものなど、どこか頼りない。ゴミ箱形のロボットは、いかにも掃除をしてくれそうな姿なのに、自分では拾えず、拾ってくれそうな人にそーっと近寄り、ゴミのまわりをウロウロして、思わず人に拾わせてしまう。
変な動きをするゴミ箱3体に囲まれると、こちらが何らかのアクションを期待されているような感覚になるから不思議だ。
岡田教授の専門は、コミュニケーション認知科学。ロボットを介して生まれる関係性に着目している。このゴミ箱ロボットを子どもたちが集まる公共の場に置いて実験すると、好奇心からゴミ箱を叩く反応もあったが、ロボット側の「意図」を察して、素直にゴミを入れてあげる子どももいたという。
岡田教授は言う。
「実装した機能は『ゴミを拾いたいけど拾えないという意図を伝えるためにウロウロと動きまわる』『ゴミを拾ってもらったときに、ちょんとおじぎをして返す』といったもの。他力本願でちょっとずるいのだけれど、人の助けを借りて、結果的にゴミを拾い集めてしまう。それは、一人ではできない不便さゆえに他者との『関係』を志向し、結果的にはまわりの人たちのアシストを得る。人の関係性の中から生まれるこうした価値に着目し、研究を続けています」