赤ちゃんはとても面白い。お母さんの胸に抱かれながら、本来はなにもできないような弱い存在であるにもかかわらず、ときどきぐずりながら、結果としてミルクを手に入れ、行きたいところにも移動できてしまう。時には、お兄ちゃんの玩具をも奪ってしまうのだ。家庭の中で一番に弱い存在であるはずなのに、結果として最も強い存在であったりする。
 こうした赤ちゃんの隠された能力に驚きつつも、この「弱さをちから」とするようなロボットとはどのようなものか。それを作れないものか…。ああでもない、こうでもないという議論の中から、「自分ではゴミを拾えないけれど、子どもたちのアシストを上手に引き出しながら、結果としてゴミを拾い集めてしまう」という「ゴミ箱ロボット」のコンセプトが生まれてきた。

 ゴミを拾い集めるロボットを実現していくには、高度な画像処理やセンサーを使用して、ゴミを見つけ出す。そして、それを上手に拾い上げるための、ロボットのアームと小気味よく動く指とを用意する。そういうフツウの考え方もあるけれど、それだけでも大掛かりなロボットになってしまう。火星の探査をするわけでもないのだから、もっとシンプルにできないものか。
 燃えるゴミなのか、燃えないゴミなのか。アルミ缶なのか、それとも…。それらを分けることが難しいのであれば、そばにいる子どもたちに手伝ってもらえばいい…。「全部自分で…」という拘りは捨ててもいいのではないか。そんな考え方を受け入れてみると、少しずつ身軽になっていく。ゴミを摘まみ上げることが難しいのなら、子どもたちに拾ってもらえばいいじゃないか。
 器用に動く指もいらない、ゴミを分けるセンサーもいらないのかもしれない。こうしてそぎ落とした結果として、最後に残るもの、そこに必要なものとはなんだろうか。それは思わず助けたくなるような、何らかの意図と弱さを備えた存在としてそこにあるということ、それを子どもたちに認識してもらうことだろう。
 何らかの意図ある存在として、子どもたちの志向的な構えを引き出す。そして、「そのゴミを拾いたい、でも拾えない」という社会的な表示、これは「べてるの家」において「弱さの情報発信」と呼ばれているものだ。あるいは、他者のアシストを引き出すために、何らかの社会的なスキルを必要とするかもしれない。
 「全部自分のちからで…」という発想とくらべると、むしろ他者の存在を予定しつつ、よりソーシャルな存在を指向しているといえる。
Sociable Trash Box イメージ
ゴミ箱ロボットの実装
 ゴミ箱ロボットの設計にあたっては、いわゆるチープデザイン、「引き算としてのデザイン」と呼ばれる考え方を基本としている。アームなどのゴミを拾うための機能は持っていない。そのために、ゴミ箱ロボット自身ではゴミを拾うことはできない。また顔のようなものも備えていない。唯一、カメラ用のレンズ部分を露出させており、それは子どもたちから「目」として解釈される場合もあるだろう。
 また、ゴミ箱ロボットの内部にバネが組み込まれており、思わず手を差し伸べたくなる、ヨタヨタとした頼りない振る舞いを生みだしている。移動の際には左右のホイールを交互に動かし、そのヨタヨタ感を引き出すように設計されている。
 ゴミ箱ロボットは大きく分けて上部と下部の二つの部位に分けることができる。上部は、左右に本体を捻るための1つのサーボモータと前後に体を曲げるための2つのサーボモータから構成され、何かを探すような振る舞い、ゴミに対して上体を近づけたり、お辞儀をするような振る舞いを生みだす。また、コンテナ内へのゴミの通過を検出する赤外線センサ、人の有無やその動きを検知する焦電型赤外線センサ、USBカメラから構成されている。
 下部は、身体配置の調整や移動のための2つのサーボモータ、240度の範囲で周囲との距離を計測する走査型測域センサ、バッテリー、PCボードで構成されている。また、ゴミ箱ロボット間での通信や遠隔操作のために無線LANでの接続が可能になっている。
Sociable Trash Box イメージ

発表論文等

論文誌

  • 三宅泰亮,山地雄土,大島直樹,デシルバラビンドラ,岡田美智男:Sociable Trash Box:子どもたちはゴミ箱ロボットとどのように関わるのか,人工知能学会論文誌 特集論文「ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)」, Vol. 28, No. 2, SP-K, pp. 197-209 (2013).
  • Yuto Yamaji, Taisuke Miyake, Yuta Yoshiike, P. Ravindra S De Silva and Michio Okada: STB: Child-Dependent Sociable Trash Box, International Journal of Social Robotics, Volume 3, Number 4, Pages 359-370 (2011).
  • 吉田善紀,吉池佑太,岡田美智男: SociableTrashBox: 子どもたちと一緒にゴミを拾い集めるロボット,ヒューマンインタフェース学会論文誌,Vol.11, No.1, pp.27-36 (2009).

解説・総論

  • 岡田美智男:ゴミ箱ロボット―関係論的なロボットの目指すもの,特集:不便の効用を活用するシステム,計測と制御 Vol.51, No.8, pp.753-758 (2012).

国際会議

  • Tatsuya Mori, Shohei Sawada, P. Ravindra S De Silva, and Michio Okada: Social Trash Box Robot: Behavior Parsing and Goal Inferences in Dynamic Interactions, Proc. of the First International Conference on Human-Agent Interaction (iHAI 2013), II-2-3, Sapporo, Japan, August 7-9 (2013).
  • Yuto Yamaji, Taisuke Miyake, Yuta Yoshiike, P. Ravindra De Silva and Michio Okada: STB: Intentional Stance Grounded Child-dependent Robot, Proc. of International Conference on Social Robotics (ICSR 2010), November 23-24, Singapore (2010). (in: S.S. Ge et al. (Eds.): ICSR 2010, LNAI 6414, pp. 71-80. Springer, Heidelberg (2010)).
  • Yuto Yamaji, Taisuke Miyake, Yuta Yoshiike, P. Ravindra De Silva and Michio Okada: STB: Human-Dependent Sociable Trash Box, Proc. of 5th ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction (HRI2010), pp.197-198, March 2-5 2010, Osaka.
  • Yuta Yoshiike, Yuto Yamaji, Taisuke Miyake, P. Ravindra De Silva and Michio Okada: Sociable Trash Box, Proc. of 5th ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction (HRI2010), p.337, March 2-5 2010, Osaka.

全国大会・シンポジウム等の予稿集

  • 佐田 和也, 川上 悟, P.Ravindra S. De Silva, 岡田 美智男: Sociable Trash Box:ゴミ箱ロボットが社会性を備えるとは?, 第12回情報学ワークショップ(WiNF2014) 論文集, pp. 17-20 (2014/11/29).
  • 川上 悟, 佐田 和也, P.Ravindra De Silva, 岡田 美智男: 子どもたちのコミュニティに対するゴミ箱ロボットの参加方略について, ヒューマンインタフェースシンポジウム2014 DVD-ROM論文集, pp. 619-624 (2014/9/9-12).
  • 森達哉,三宅泰亮,デシルバラビンドラ,岡田美智男:子どもとロボットに生まれる固有距離とその推定,平成24年度電気関係学会東海支部連合大会講演論文集,D1-5 (2012/9/24-25).
  • 澤田翔平,森達哉,デシルバラビンドラ,岡田美智男:Sociable Trash Box:「内なる視点」からの参与観察について,ヒューマンインタフェースシンポジウム2012論文集,1528D,pp. 335-338, (2012/9/4-7, 九州大学).
  • 三宅泰亮,森達哉,吉田紀子,吉池佑太,P. Ravindra S. De Silva,岡田美智男: なんだコイツは?−子どもたちはゴミ箱ロボットをどのような存在として捉えたのか, HAIシンポジウム2011論文集,I-2B-1 (2011/12/3-5).
  • 吉池佑太: 子どもたちはゴミ箱ロボットとどのように関わるのか?ーフィールドワークからの知見とその考察ー,日本心理学会第75回大会,ワークショップ「発達支援者としてのお友達ロボットの可能・ォ」(話題提供)(2011/09/16).
  • 吉田紀子,三宅泰亮,吉池佑太,P. Ravindra De Silva,岡田美智男:Sociable Trash Box:子どもたちはゴミ箱ロボットをどう捉えたのか - パーソナルスペースを手掛かりとして -,ヒューマンインタフェースシンポジウム2011論文集,pp.567-570, (2011/9/13-16, 仙台国際センター).
  • 森達哉,三宅泰亮,吉池佑太,P. Ravindra De Silva,岡田美智男:Sociable Trash Box: 子供たちのアシストを引き出すための振舞いのデザインについて,ヒューマンインタフェースシンポジウム2011論文集,pp. 857-860, (2011/9/13-16, 仙台国際センター).
  • 三宅泰亮,山地雄土,吉池佑太,P. Ravindra De Silva,岡田美智男:ゴミ箱ロボットと子どもたちとの関わりについて - 群れるゴミ箱ロボットと単独のゴミ箱ロボットとの違いに着目して -,日本認知科学会第27回大会発表論文集,P3-39, (2010/9/17-19, 神戸大学).
  • 山地 雄土, 三宅 泰亮, 吉池 佑太, 岡田 美智男 弱さをチカラに:ゴミ箱ロボット(Sociable Trash Box)と子どもたちとの関わりを探る,HAIシンポジウム2009資料集,1B-2 (2009/12/4-5).
  • 山地雄土, 三宅泰亮, 吉田善紀, 吉池佑太, 岡田美智男:群れるゴミ箱ロボット:緩やかな共同性とその社会的存在としての帰属,ヒューマンインタフェースシンポジウム2009論文集, pp.571-574 (2009/9/2-4).
  • 吉田善紀,鴨田貴紀,吉池佑太,岡田美智男:弱さをチカラにして:ゴミ箱ロボットへのアシスト行為の誘発,ヒューマンインタフェースシンポジウム2008論文集, pp.821-824 (2008.9).
  • 吉田善紀,吉池佑太,岡田 美智男:群れをなす Sociable Trash Box : 子どもたちとの緩やかな共同性を 生み出すインタラクション空間のデザイン,インタラクション2009論文集(情報処理学会シンポジウムシリーズ Vol.2009, No.4), pp165-166 (2009/3).
  • 吉田 善紀,椹口 敏広,岡田 美智男:Sociable Trash Box: "弱さのチカラ"に基づくインタラクションデザインとその応用,インタラクション2008論文集(情報処理学会シンポジウムシリーズ Vol.2008, No.4), pp.69-70 (2008/3/3).
  • 吉田善紀,小嶋宏幸,吉池佑太,岡田美智男:Sociable Trash Box:ヒトとゴミ箱との相互構成的な関係を探る,ヒューマン・Cンタフェースシンポジウム2007資料集, pp349-352 (2007.9).

コンテスト等への応募

  • 三宅泰亮: なにをみているの? - Is Anybody Here ? -, 国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト (IVRC) 2009.

受賞歴

  • 第13回ヒューマンインタフェース学会学術奨励賞 (吉田紀子:Sociable Trash Box:子どもたちはゴミ箱ロボットをどう捉えたのか - パーソナルスペースを手掛かりとして -,ヒューマンインタフェースシンポジウム2011論文集,pp.567-570 (2011)).
  • ICSR 2010 Best Paper Finalist (Yuto Yamaji, Taisuke Miyake, Yuta Yoshiike, P. Ravindra De Silva and Michio Okada: STB: Intentional Stance Grounded Child-dependent Robot, Proc. of International Conference on Social Robotics (ICSR 2010), November 23-24, Singapore (2010)).
  • HRI 2010 The best Late-Breaking Paper (Yuto Yamaji, Taisuke Miyake, Yuta Yoshiike, P. Ravindra De Silva, & Michio Okada "STB: Human-Dependent Sociable Trash Box", Proc. of 5th ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction, March 2-5 2010, Osaka).

関連特許

  • 特許第4556024号,「ロボットおよびロボットシステム」,登録日2010年07月30日.
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